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2022年11月2日水曜日

「防災トイレフォーラム2022 -被災経験をトイレ対策に活かす-」の開催報告

日本トイレ研究所「災害用トイレ普及・推進チーム」は、202291日に東京都との共催で「防災トイレフォーラム2022 -被災経験をトイレ対策に活かす-」を開催致しました。

 

参加者は対面での参加が37名(コロナ対策により)、オンライン視聴による参加は登録389名、想定最大視聴者数は471名でした。このうち地方公共団体は106団体でした。

 

19239月に起きた関東大震災から、来年9月でちょうど100年になります。

この100年の間、数多くの自然災害が発生し、甚大な被害を受けてきました。

さまざまな防災対策が講じられてきましたが、常に私たちの想定を超えるのが自然災害です。

震災時のトイレ問題については、阪神・淡路大震災で顕在化し、新潟県中越地震、東日本大震災、熊本地震等において、繰り返し向き合うことになり、多くの被災者がつらい思いをしました。

 

本フォーラムでは、これからのトイレ対策に活かすべき要点を共有することを目的とし、被災経験のある行政担当者や研究者から当時の状況と対応についてお話し頂きました。

 

プログラム詳細こちらを参照ください。




フォーラムでは、まず初めに、東京都の芝崎氏より「新たな被害想定や社会環境の変化等により顕在化した課題」というテーマでご発表いただきました。今年5月に見直された首都直下地震の被害想定では、水道の復旧見通しは約17日後、下水道は約21日後でした。ただし、これには浄水施設や下水処理施設等の被災は定量評価に含まれていません。上下水が復旧するまで水洗トイレは使用できなくなります。仮設トイレの早期対応は困難と考えられますので、公共施設やコンビニ、オフィス、マンション、戸建て等、あらゆる場所において、携帯トイレをはじめとした備蓄してあるトイレでの対応が求められます。

今後、東京都地域防災計画(震災編)の改定における重点施策である「住民の生活再建」において、今後具体化を図るべき対策として「自助・共助・公助一体となった災害時トイレ確保策の推進」が位置づけられています。

 

続いて、NPO 政策研究所 の相川康子氏より「阪神・淡路⼤震災で痛感したトイレ・下⽔道など静脈系ライフラインの重要性」というテーマでご発表いただきました。阪神・淡路大震災は、神戸市全域の水道が復旧したのは発生から3カ月後で、下水道も処理場が機能停止するなど甚大な被害を受けました。そのため、水洗トイレは使用できず避難所や公衆トイレなどは床一面が汚物の山になりました。これらの経験を踏まえ、神戸市では初動対応として計800基の災害用トイレを備蓄しており、後続対応として流通備蓄・広域応援の1200基を含めて計2000基を整備する計画です。

相川氏は、し尿処理や廃棄物処理はすべての人にかかわるテーマであるため、平時からもっと話し合い、知恵を出し合う仕組みが必要であること、さらには災害時のトイレは「人権問題」でもあることを提案されました。

 

元新潟県職員で現(公財)新潟県環境保全事業団の米田氏からは「新潟県中越地震を踏まえて地域防災計画に『トイレ対策計画』を新設」というテーマでご発表いただきました。新潟県中越地震では、車中泊による避難やエコノミークラス症候群が話題となり、トイレが嫌で水分補給等を控えたことに起因して、エコノミークラス症候群による肺塞栓症で災害関連死に陥った例もありました。

被災経験を踏まえ、新潟県は2007年に地域防災計画を見直し、「トイレ対策計画」を新設しました。この計画の目標(市町村の責務)は「被災者のトイレ利用を確保すること」とし、トイレ対策は調達(ハード)と維持管理(ソフト)の両面から取り組むことが重要で、災害時要配慮者への配慮についても明文化されました。

 

元浦安市長の松崎氏からは「東⽇本⼤震災での液状化によるトイレ問題」というテーマで、都市災害の最大の課題はトイレ問題ということをお話しいただきました。浦安市においては、上水道の応急復旧は27日後、下水道は36日後でした。その間、携帯トイレの配布や仮設トイレの設置と汲み取りの実施などを行いました。様々な取り組みを行う中で、風による転倒対策、高齢者や障害者は和便器が使用でいないこと、段差の解消などが課題になりました。とくに女性への配慮として「人目」「安全確保」「夜間対策」が重要であることが分かりました。

排泄は日常であり、健康に直結するからこそ、我慢しなくてもすむように、障害者、高齢者、乳幼児、妊産婦、ペット、高層マンションなど、全ての対応を可能な限りシミュレーションすることが重要であると提案されました。

 

M7クラスの首都直下地震が起こる可能性は、約70パーセントとも言われていますが、トイレの対策・備えはまだ十分に進んでいるとはいえません。首都圏は日本の全人口の約3分の1が暮らします。いつ来るかわからない災害に対し、十分な備えを行うべく、トイレの備えの大切さや災害用トイレの質の向上をはじめ、さまざまな取り組みが必要だと感じています。



【ご案内

日本トイレ研究所では、災害時のトイレの備えの大切さを伝えることを目的に2022115日(津波の日)~1119日(世界トイレの日)の期間で防災トイレキャンペーンを実施したします。

 

ポスターをみんなで貼って、災害時のトイレの備えの大切さを広める活動です。

ポスターは日本トイレ研究所のホームページからダウンロードできます。


ご協力のほどよろしくお願いいたします!


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